オルガニスト・鈴木一浩さんのライブ

旧知のオルガニスト・鈴木一浩さんからご案内をいただいて、鈴木さんがトリオで演奏するライブを聴きに行った。会場は沼袋駅北口にある「OrganJazz倶楽部」。
鈴木さんによれば、「ビンテージハモンドB3オルガンのサウンドが聴ける都内でも唯一のライブハウス」である。そう言われても、門外漢のぼくにはピンと来ないのだが…。 沼袋は全く土地鑑のないところなので、地図を見ながら中野駅からおよそ20分歩いていった。


鈴木さんは年に一度、この「OrganJazz倶楽部」でライブを行なっている。いつもはベースが入ったカルテットで演奏するのが、今年はベーシストが怪我をしているのでトリオになったという。ぼくが店に着いたのは開演の30分ほど前だったが、すでにほとんど満席の状態で、カウンターの片隅にどうにか空きを見つけて滑り込んだ。よくみると店を埋めたお客の3/4ほどが女性で、鈴木さんのライブの常連らしい人がほとんどだった。おっさん、モテるやないけ…とむらむらと嫉妬の炎を燃やす。

ぼくが鈴木さんを知ったのはオルガニストとしてではない。鈴木さんの表の顔だか裏の顔だかは知らないが、釧路にある「丸善木材」という会社の副社長である。5年前、釧路の我が家にウッドデッキを設えたときに、縁があって鈴木さんの会社にお願いをした。そのときの出来上がりがとても気に入ったので、今年、築21年の家の外装をリニューアルするにあたって、まず鈴木さんに相談をした。鈴木さんが提案してくれたのが焼き焦がしたカラマツ材を一面に張るというもので、これも期待以上のものに仕上がった。本業(?)の建築の面でも、とてもセンスのいい人である。そういう鈴木さんとのつきあいのなかで、彼がプロのオルガニストであることを知った。ご本人からCDをいただいて聴いた。


もともとぼくはジャズが好きで、アーシーなオルガン・ジャズが好きだった。もっともぼくが好んで聴いたのは、ジミー・スミスやベイビー・フェイス・ウィレットで、オーソドックスな4ビートが中心。ギターのグラント・グリーンや、サックスのジーン・アモンズ、エディ・ロックジョー・デイヴィスなどと組んだ、日本でいうならド演歌みたいな泥臭いジャズが好みだった。鈴木さんは、フュージョンというのか、ファンクというのか、ロックの洗練を受けた後のジャズで、もっとモダンである。


ライブでの演奏は実に素晴らしいものだった。オリジナルとスタンダードを組み合わせた構成で、ファンキーなナンバーからバラード、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」、
さらにはビートルズの「ヘイ・ジュード」まで。
鈴木さんはもちろん、テナー&ソプラノサックスの安川信彦さんの熱っぽいブロウ、大槻敏彦さんの奔放自在なドラミングに唸る。演奏するにつれてトリオの息が合ってくるのか、だんだんよく鳴る法華の太鼓で、目が(耳が)離せなくなった。こうなると、聴いている側もだんだんヒートアップしてくる。ミュージシャンとリスナーが一体になった、小さなライブハウスならではの至福の時間が訪れた。


鈴木さんは6年後の還暦記念ライブもここで行ないたいと言った。してみると、おっさん、ぼくより6つも若かったのか…。

ライブの余熱を楽しむように、風に吹かれて中野まで歩いた。


少し飲み足りなかったので「ぢどり屋」なる店で焼酎を一杯。文字通り一杯だけ飲んで、帰る。
いい夜だった。


コメント

  1. ありがとうございます。先日のお客さんの中では最も近所にお住いの貴殿と、遠い釧路でお知り合いになれた縁の面白さを感じています。お仕事柄でしょうが読みやすく面白く無駄のない文章がさすがなので僕のsnsで僭越ながら紹介させていただきました。それではまた釧路でお会いしましょう。

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    1. はは、勝手なことを書いてごめんなさい。
      本当に愉しいライブでした。
      再見。

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