冬と春とがせめぎあう

東京と釧路を行ったり来たりの生活がもう20年近い。もともと釧路の家は、老後を過ごそうと考えて建てたものだ。
去年、定年退職したものの、まだ仕事を続けていたので東京ベースの生活が続いた。それでも、去年は釧路でおよそ100日間を過ごした。気がついたことは、釧路にいるときの方が体調がいいということである。
寒い土地なのに…やっぱり空気が東京とは違うのだろうか。この4月からは、仕事を一歩退いて、釧路での生活を長くすることにした。東京の病院で続けていた抗がん治療も釧路に移した。ありがたいことに、釧路の病院でも東京に引けを取らない治療ができる。


先月29日から釧路に来ているのだが、東京はもう桜が満開だそうだ。釧路はようやく早春の気配が漂い始めたところ。我が家の周辺では、冬と春とがせめぎ合っている。


この写真は我が家の南側、もう雪はほとんど残っていない。きのうは家の周辺でふきのとうを摘んできて、「ばっけ味噌」を作って酒の肴にした。「ふきのとう味噌」のことだが、単身赴任していた仙台ではそう呼んでいた。


こちらは家の北側、一転して雪のピラミッドである。屋根から落ちた雪が溜まって、ぼくの背丈ぐらいある円錐状に積もっている。帰ってきて早々、除雪をして玄関に入る道をつけなければならなかった。夏の雨は馬の背を分けるというが、釧路の春の雪は家の屋根を分けるものらしい。


我が家から歩いて5分ちょっとの千代の浦海岸に流氷が接岸していることをニュースで知った。散歩がてらに行ってみると、確かにびっしり接岸していた。


アムール河口域で生成された流氷が遥々オホーツクを流れ下り、知床岬をまわりこみ、納沙布岬をも越えて、釧路の海岸線にまで旅してきたのである。


網走あたりには毎年のように接岸するが、釧路まで来るのは珍しい。ニュースによれば9年ぶりだそうだ。氷の上を渡ってくる風は冷たいが、陽光がすっかり春めいてきたのでそれほどの寒さは感じない。

釧路で桜(ヤマザクラだが)が咲くのは5月中旬になる。稚内よりさらに遅く、「桜前線」は釧路あたりで消滅するのだ。同じ頃、家の庭に植えたツツジも咲くだろう。ちょっとした用事があって来週は一度東京に戻るが、一週間ほどでまた釧路に引き返してくる。今年は、釧路でゆっくりと春の訪れを見守るつもりだ。








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